IoT導入で食品製造業の課題を解決

はじめに
食品製造業は、消費者のニーズ、技術の進化、規制の厳格化など、さまざまな要因に影響されています。さらに少子高齢化の影響で人手不足が加速し、それは今後もさらに続いていくとみられています。
その食品業界で、今注目されているのがIoT(Internet of Things)技術です。導入が急速に進行しており、業界全体において効率化、品質向上、安全性確保の重要な手段となっています今回は、食品製造業におけるIoTの具体的な活用方法やその効果、今後の展望について考察していきます。
既に身近に活用されているIoT
IoTとは、「Internet of Things」の略称で、インターネットに接続されたデバイス同士がデータを相互に通信し、情報を交換する仕組みを指します。これにより、リアルタイムでの監視や制御が可能となります。この技術は製品工場だけでなく、物流業・建築現場、さらにすでに私たちの生活にも活用されています。
例えばGoogleアシスタントやAlexaなどのスマートスピーカー、監視センサーで鍵を開閉する玄関ドア、冷蔵庫内の食品の在庫を把握するシステム、外出先から電源や温度設定を操作できるエアコンなど多数挙げられるように、家庭でも大いに役立つ技術なのです。
IoT導入が推進される背景
食品製造業は国内最大規模の基幹産業でありながら、ほかの製造業に比べて労働生産性や利益率が低く、さらに慢性的な人手不足も課題となっています。昨今、食品工場の現場を支える生産年齢人口の減少が懸念されています。厚生労働省の「2024年ものづくり白書」によると、食品業界の製造業就労者数は2002年1,202万人であったものの、2023年には1,055万人と147万人も減少しています。また、農林水産省の試算によると、2040年には食品産業全体の従業員数が約557万人に減るといわれており、今後さらなる労働力の減少が予想されます。
労働者1人あたりの作業負荷が高まることによって懸念されるのが「労働災害」や「食品事故」の増加です。食品製造業が抱える課題の解決策として導入が進んでいるのが、IoTを活用した食品工場のスマート化であり、IoTを導入することにより作業の属人化を防止し、労働災害や食品事故の発生リスクを抑える効果が期待されています。
IoTはAIや産業ロボットに比べ導入コストが抑えられ、さらに従来のITシステムのクラウド対応などによってIoTとの連携が容易になったことも業界への導入を後押ししている要因です。
IoT導入のメリットとデメリット
食品工場において重要な変革をもたらす IoTですが、活用することで利点だけでなく、導入にあたり課題もあげられます。 IoT導入の主なメリットとデメリットをみてみましょう。
●メリット
1.効率性の向上・業務の省人化
IoTデバイスは、リアルタイムでデータを取得し、分析することができます。これにより、迅速な意思決定が可能になり、製造ラインやサービスの最適化が図れます。また、プロセスの自動化やリモートモニタリングにより、作業効率が大幅に向上するのです。人手によるエラーを減らし、運用コストを削減でき、労働力の属人化の防止や労災リスクの抑制も期待できます。
2.予防保守の実現
機器の状態を常に監視することができ、故障が予測される前にメンテナンスを行うことが可能になりダウンタイムを最小限に抑えることで、機会損失を防ぐことが可能です。
3.食品事故リスクを抑制
サプライチェーン全体を通じて、製品の流れを追跡することができ、品質管理やリコール対応がスムーズになり、食品事故のリスクやケアを迅速に行えることで消費者の安全確保に寄与します。
4.需要の変化や顧客のニーズへの対応
正確かつ多くのデータを収集し、分析することでその規則性や異常値、相関・因果関係など、さまざまな情報を得ることができます。データを活用することで顧客のニーズにマッチした適切なサービスや製品を提供することが可能になり、顧客満足度を向上させることができます。
●デメリット
1.初期コストと維持費用
IoTシステムの導入には高額な初期投資が必要です。デバイス、センサー、通信インフラ、ソフトウェアなどの導入がコストを押し上げる要因となります。また、運用していく中での維持コストも考慮する必要があります。特に中小企業にとっては、その負担が大きい場合もあり、政府の支援や補助金制度を利用することも検討しなければならないでしょう。既存設備を継続利用できるか、環境構築にどれくらいコストがかかるかを把握しておくことも重要です。
2.セキュリティのリスク
IoTデバイスが増えることで、サイバー攻撃の標的となるリスクが高まります。データの漏洩やシステムの不正利用を防ぐために、強固なセキュリティ対策が求められます。
3.データ管理の複雑性による人材確保
膨大なデータが生成されるため、効果的なデータ管理と分析が必要になります。これにより、専門的なスキルを持った人材が必要となり、運用の難易度が増します。
4.互換性の問題
異なるメーカーやプラットフォームのデバイス間での互換性に課題が生じることがあります。統一された標準がない場合、システムの統合が難しくなる可能性があります。システムダウン時の対策も行うことが課題となるでしょう。
IoTを導入する際には、セキュリティリスクやコスト、人材不足などのデメリットがあるものの、企業の課題を解決したり、今後のマーケティングに繋がったりすることも。自社に合った技術を政府の支援や補助金を上手く活用し取り入れることで、新たなサービスやビジネスへの足掛かりとなってくれるはずです。
まとめ
食品製造業は、IoTの導入によって近年劇的な変化を遂げており、今後も様々な問題打破や新たなビジネスの可能性が広がっています。
生産効率の向上、品質管理、顧客体験の向上、持続可能な製造など、IoT技術がもたらす効果は計り知れません。また、IoTデバイスによる膨大な収集データから生まれる気づきは、企業の課題の解決やビジネス創出のアイデアを生むきっかけになってくれるでしょう。
企業はIoTの導入を進め、サイバーセキュリティや専門人材の育成といった課題にも取り組みながら、テクノロジーの活用や労働環境の改善を推進していくことで、未来を見据えた戦略的行動につながります。IoTの活用は、今後企業を持続可能な発展へとつなげていく鍵となりそうです。