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トランプ関税が日本の食生活に及ぼす影響

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はじめに


トランプ政権下で導入された関税政策は、アメリカの貿易戦略の一環として、特に中国やEU諸国からの輸入品に高い関税を課すものでした。就任当初からトランプ氏が貿易赤字を解消する名目で「相互関税」を大幅に引き上げ、日本にも関税24%が課されることを発表、世界中に大混乱を引き起こしました。このトランプ関税は日本を含む他国にも影響を及ぼす可能性があります。日本の食生活は、国内の農産物だけでなく、海外からの食品にも大きく依存しているため、トランプ関税がもたらす影響は多岐にわたるのです。今回は、日本国民の暮らしはこれからどうなるのか、どのような変化をもたらす可能性があるのかご紹介していきます。

世界中に広がる「トランプショック」


43日未明(日本時間)にトランプ大統領が発表した「相互関税」が世界を揺るがしています。45日からすべての国や地域を対象に一律10%の関税を課し、さらに同月9日から、貿易赤字が大きい国や地域を対象に、相手国の関税率や非関税障壁をふまえて自国の関税を引き上げる、相互関税を導入すると発表したのです。日本をはじめアジアを中心とする世界各国が、貿易赤字が大きい国として挙げられ、日本は24%の関税を課せられることになりました。この「トランプショック」は、日本はもちろんのこと、瞬く間に世界中に影響をもたらしました。特に日本経済への影響は顕著で、日経平均は乱高下し、相互関税の詳細を発表した4月3日の東京株式市場は約8か月ぶりに3万5,000円を割り込み、47日に一時3万1,000円を割ったかと思えば、翌日8日には3万3,000円台に回復するなど不安定な値動きを見せました。
その後49日にトランプ氏は、一律10%の基本税率に上乗せされた分の関税を90日間にわたり一時停止する発表をしましたが、それでも10%の関税は維持されるのです。

日本経済への影響


相互関税の影響で、日本のGDP(国内総生産)は1年で0.71%押し下げられる試算となり、額にすると約4兆円、さらに相互関税が他国に及ぶ影響を考慮すると、日本のGDP0.82%、額にして約5兆円分が押し下げられる可能性があると専門家は指摘しています。
今後、米国の貿易赤字が解消されなければ、トランプ氏は関税率をさらに引き上げる可能性があることも視野に入れておく必要があり、今後もトランプ氏の動きに注目し、対処していかなくてはなりません。ちなみに試算上で、米国の対日貿易赤字を解消するためには、日本からの輸入品全体に対して60%の関税を課す必要があり、その場合、日本のGDP1.4%減、額にすると約8兆円も押し下げられることとなります。これは、想定されている中で最悪のシナリオと言えるでしょう。

値上げされる食品は?日本人の「食」への影響


トランプ氏は、すべての自動車に25%の関税を課すことを正式に発表しており、この自動車関税に相互関税も上乗せされるということで、世間を騒がせていますが、食料品も相互関税によりさらに値上げされることが想定されます。
現在も日本は物価高で、コロナ前と比べて食料品の値段は上昇しています。しかし、関税が引き上げられることで、それらの輸入価格が上昇し、現在の1.2倍になる可能性があります。さらに、現在日本では備蓄米を放出したにも関わらず、米がスーパーなどに行きわたっておらず、価格は昨年の2倍程度のままで高止まりしています。日本国民の主食の米が買いづらいことに加え、今回のトランプ氏による相互関税は、消費者の我々にとってさらなる追い打ちをかけることになるでしょう。
原材料を米国産に頼っている品目は、値上げが不可避です。米国産の牛肉や豚肉、穀物(トウモロコシや大豆など)は、日本の市場でも広く流通していますが、当然値上がりすることが予想されます。値上げが予想される具体的な品目としては、米国産に頼っている小麦を原材料とする製品。例えば、パスタやうどん、パン、ケーキなどです。

値上げが予想される意外な食品


輸入食品が高騰することで、国内産の食品の方が安くなり、消費者は自然と国内産の食材を選ぶようになると思われがちですが、そうはいかないようです。なぜならば、日本国内の家畜飼料の原料の半分近くがトウモロコシを使用しており、そのトウモロコシはほとんどが米国から輸入されています。家畜飼料の値上がりが販売価格に反映されることにより、国内で飼育している和牛や豚、鶏の精肉加工食品の価格も今後値上げされる可能性が高いのです。同様に、養殖魚の餌も値上がりするため、養殖がさかんなマグロを中心とする養殖魚も値上げされるかもしれません。最終的には消費者にさらなる負担が転嫁されることが予想されます。結果として、家庭の食費がこれまで以上に上がり、経済的な理由で食品を選ぶ際の選択肢が狭まる恐れがあります。

国内農業への影響


消費者だけでなく我々日本国民の食を支える、日本の農業も苦境に立たされています。日本政府は米国との関税協議をめぐり次回の閣僚会議で米の輸入枠を拡大する案も出ていると報じられており、これにより、国内の農家をはじめ関係企業は、地域農業が崩壊すると猛反対しています。
また、輸入食品の価格が上昇すると同時に、家畜飼料も値上がりし、畜産農業や酪農業にも大打撃を与えることとなるでしょう。業界全体が縮小や経営難に陥り、ただでさえ後継者不足や廃業などで離農者が増えているという日本の現状であるにも関わらず、このような事態を招いてしまっているのです。今後、閣僚会議や関税の協議での政府の対応にさらなる注目が集まります。

 

まとめ


トランプ関税が日本の食生活に及ぼす影響は、多面的で複雑です。輸入食品の価格上昇や国民の食生活への影響、国内産業への影響など、多岐にわたる要素が絡み合っています。専門家によれば、現在は円高・ドル安に進む傾向にあり、短期的にみれば物価は上昇しないとみられています。しかし、関税の影響によって米国内でスタグフレーションが発生し、不況と物価上昇の両方が進む可能性があるのです。このような状況の中で、日本政府がトランプ氏の政策にどのように対応や協議をしていくのか、企業や農家がどのように対処をしていくかによって、我々消費者の生活はもうしばらく振り回されることになりそうです。 

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