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備蓄米制度について知ろう

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はじめに


2023年の猛暑により、米の品質が低下、それに伴い市場への供給が落ち込み、2024年夏ごろから各地で米の買い占めなどにより品薄が発生し始め、現在は「令和の米騒動」と呼ばれる事態に陥っています。過去に例をみないほど米の価格高騰が顕著で、2025年3月から備蓄米が放出されることとなりました。
日本の食文化において重要な位置を占める米は、ただの主食にとどまらず、国民の生活や経済、さらには災害時の備えとしても極めて重要な資源です。備蓄米制度は、国が国内での米の安定供給を図るための重要な政策の一環として位置づけられています。今回は、現在店頭販売も開始されている備蓄米について、備蓄米の本来の意味や意義、現在流通している米や今後の展望について詳しくご紹介します。

備蓄米制度の本来の意味合い


備蓄米制度とは、国が非常時や自然災害時に備えて米を蓄えておく制度です。
1993年の東北冷害により米が大凶作となり、消費者が米を求めてスーパーに殺到し「平成の米騒動」と呼ばれました。当時は中国やタイからの緊急輸入という異例の対応がとられましたが、日本の食文化に合わないタイ米の抱き合わせ販売などが問題となりました。政府はこの経験を踏まえ、いつでもお米を供給できるよう、1995年からは法律により国によるお米の備蓄を制度化しました。 現在は、100万トン(10年に一度の不作にも供給できる量)を備蓄しています。
備蓄米は、農家が生産した玄米の中から、政府が入札や契約により購入したものです。購入後は専用の倉庫やサイロに保管され、35年ごとに入れ替えが行われます。品質が落ちる前に処分された米は、災害時の支援や学校給食などに活用されることがあります。このように、政府備蓄米は家庭用の非常食とは異なり、大規模かつ計画的に管理されているのです。
政府備蓄米の目的は主に「災害などの緊急事態への備え」「米の価格の安定」「国民が安心して食生活を送れるようにすること」の3つです。日本は米が主食であり、供給が止まったり価格が急に上昇したりすると、私たちの生活に重大な影響を与える可能性があるため、政府は食料安全保障の一環として備蓄米を管理しています。
日本は地震や台風など自然災害が多く、これに伴い食糧供給が停滞する危険性があります。そのため、備蓄米は公的な食糧供給の基盤となっています。また、米不足や価格の高騰といった市場の不安定要因を緩和するため、必要に応じて市場に放出され、価格が高騰しすぎないよう調整したり、困っている地域に供給したりするのに大変重要な制度です。

いま市場に出回っている米はいつのもの?


今回の2025年の備蓄米放出では、主に2022年産と2021年産の玄米が対象となっています。さらに小泉進次郎農水大臣は、今後2020年産も追加で放出する方針を明らかにしています。備蓄米に使用される銘柄は、コシヒカリやひとめぼれなど我々に馴染みのあるものが多くみられます。
今回すでに放出された備蓄米は22万トン(2022年産20万トン+2021年産2万トン)で、随意契約により小売業者に引き渡され、そこから消費者へ流通しました。放出された米は低温・湿度管理された倉庫で保管されていたため、一般的な古米と比べても品質は良好です。炊き方や保存状態によっては風味が多少落ちることもありますが、安全性に問題があるわけではありません。きちんと管理された備蓄米であれば、古くても安全・安心に食べることができます。
ちなみに、政府による備蓄米の売り渡しはこれまで競争入札で行われてきました。この仕組みでは最も高い価格を提示した業者から契約できるため、落札価格が下がらない要因とも指摘されていました。
今回の放出では、随意契約により大手企業が備蓄米を買い受け販売しています。随意契約とは、一般的に価格などの条件を踏まえ発注者が契約先を任意に決めることができる仕組みのことです。
競争入札に対して随意契約では政府が販売価格を決められるため、これまでの落札価格より販売価格が低く設定されれば、米の店頭価格も下がる可能性があります。また競争入札に比べて手続きが少ないため販売までの時間が短くなるという見方もあるのです。

備蓄米に賞味期限はないのか


ここで疑問なのが、備蓄米に賞味期限はないのかという点です。実は、備蓄米にも他の食品と同様に賞味期限が設定されています。賞味期限は、米が品質を保ち、安心して消費できる期間を示しており、通常適切に保管された備蓄米の賞味期限は製袋から約3年~5年程度とされています。米の品種や保管環境によっても賞味期限は変動するため、温度や湿度がコントロールされた保管施設で適切に保管することにより賞味期限を延ばすことが可能となり、長く備蓄米を保管することができるのです。また、保管されている米は「玄米」の状態で保存されるため、精米よりも長持ちしやすいのも特徴です。さらに備蓄米は、長く置きすぎて品質が落ちないよう、計画的に「回転備蓄」という方法が取られ、一定期間ごとに入れ替えられます。古い米から順に使い、新しい米を補充していくという仕組みです。農林水産省が発表している「備蓄運営方式について」の資料では、先ほど紹介した回転備蓄(主食用として 販売することを基本)のほかに、棚上げ備蓄(主食用として販売しないことを基本)との2つが検討され、前者は毎年高額の財政負担となることから回転備蓄方式を採用してきているとのことです。
また、保存期限が近づいた備蓄米は、主に学校給食や福祉施設などで活用されたり、一部が災害備蓄品として提供されたりします。飼料用米として売却することもあります。

まとめ


備蓄米制度は、日本の安定した食糧供給を支える重要な制度です。その本来の目的は、非常時や自然災害時に備えた米の安定供給を確保することにあります。常時およそ100万トン前後の備蓄米が保有されており、国内の米の年間消費量のおよそ11.5か月分に相当します。米の不作や災害、流通のトラブルが起きたときにも、安定した量の米を全国に届けられるよう設計されています。
現在、小泉進次郎農水大臣が打ち出した5キロ2,000円の備蓄米が首都圏などのスーパーに登場し話題となっており、さらに、Amazonは政府備蓄米をプライベートブランド「by Amazon」の商品として、61310時より販売を開始。初回は予約販売で1,800(税抜)としています。しかし、備蓄米に関するニュースは多いものの現状はまだ十分に供給されておらず、今も多くのお店で5キロ5,000円を超えるなど高値が続いています。
今後、米の価格は全国的に下がるのか、政府の対応や備蓄米の販売状況にも注目です。

 


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