土用の丑の日からうなぎが消える?
はじめに
天然うなぎの旬をご存知でしょうか。多くの方は「土用の丑の日」があるから7月と思いがちですが、実は10月頃から12月だと言われています。
それでは何故、旬ではない7月にうなぎを食べるようになったのでしょうか。
その由来は諸説ありますが、天然うなぎの旬は10月~12月なので、夏のうなぎはあっさりとした味わいであまり人気がありませんでした。そこで、うなぎ屋がどうにかして売り上げをあげようと、蘭学者である平賀源内に相談を持ちかけたところ「丑の日は『う』のつくものを食べると縁起がいい」という語呂合わせを提案してくれたそうです。
本来、土用の丑の日には梅干しやうどんなど「う」のつくものを食べる習慣があったので、うなぎ屋は「本日土用の丑の日」という張り紙を出したところ、うなぎが瞬く間に売れて大繁盛し、それ以来、土用の丑の日にうなぎを食べる習慣が根付き、現代でも食べられています。
うなぎが絶滅の危機?
上記でも記載しましたが、夏に食べるのが習慣化したうなぎですが、IUCN(国際自然保護連合)は、野生生物の絶滅の危機の度合いを調査・評価した「レッドリスト(絶滅の恐れのある野生生物のリスト)」に16種類が掲載されています。
減少の理由の一つとして挙げられるのは、「漁獲量」の減少です。
水産庁のデータからも、ニホンウナギの漁獲量が1950年代後半から、減少を続けていることがわかりますが、その大幅な数字の変化は、水産資源としてのニホンウナギが、深刻な危機にさらされていることをいることを示すものといえます。
ニホンウナギ稚魚の国内採捕量の推移
出典:水産庁(2018)「ウナギをめぐる状況と対策について(平成30年6月)」より作図
注:クロコ(シラスウナギが少し成長して黒色になったもの)が入っている可能性あり)
稚魚の減少には、ダム建設などの大規模な開発事業も、ウナギが遡る川の流れを断絶し、そのすみかを奪ってしまいます。
さらに近年は、気候変動(地球温暖化)の影響による海水温の上昇や海流の変化が、うなぎの産卵場所および回遊経路に大きな影響を及ぼす可能性が指摘されています。
うなぎの養殖について
市場に出回っているうなぎのほとんどが、養殖であり2022年のうなぎの国内供給量は、57,795tで輸入が約67%、国内養殖が約33%、国内天然に至ってはわずか全体の約0.1%となっています。
国内で見てみると、1位鹿児島県(約42%)、2位愛知県、3位宮崎県と続いています。
国内養殖の約4割を占める鹿児島県でも温暖化等の環境問題や密漁の影響もありシラスウナギの稚魚が減少しており、うなぎの価格にも影響しそうです。
そんな中、2023年10月に近畿大学でうなぎの完全養殖に成功したとの発表がありました。
卵から人の手で育てた稚魚を親にし、その親からとれた卵をふ化する。ウナギ養殖に必要な稚魚のシラスウナギは天然の資源量が減っている為、完全養殖が実用化できれば安定供給しやすくなり、資源保護にもつながることが期待されます。
しかし、人工シラスウナギの生産コストは1尾約3000円で、天然の取引価格180〜600円に比べると割高となっています。
安定的に生産されるまでには、まだ時間がかかりそうですが、いつか気軽に完全養殖のうなぎが食べられることを期待したいと思います。