フードテックとは?世界的食糧問題を解決する最先端テクノロジー
はじめに
近年フードとテクノロジーを融合させた「フードテック」という技術が注目されています。
聞いたことはあっても、具体的な意味合いや取り組みまではわからないという人も多いのではないでしょうか。
今回はテクノロジーの領域がどれほど食に適用されているか、その具体的な取り組みを解説していきます。
フードテックとは
フードテックとは、最新のテクノロジーを駆使することによって、まったく新しい形の食品の開発や、調理法を発見する技術です。
近年新たな食の可能性として注目されています。
例えばフードテックによって、植物性たんぱく質から肉を再現したり、単品で必要な栄養素を摂取できるパスタを開発したりすることが可能になります。
そのため、フードテックは世界的に深刻化する食糧問題を解決する方法としても、大きな期待を集めています。
フードテックの将来性
世界の飲食料の産業は、今後も着実な成長が期待されています。
人間が生きていくために必要不可欠な商品を扱っているため、その規模は極めて巨大です。
最新テクノロジーを適用することで高付加価値化できれば、社会に与える影響は絶大なものになるでしょう。
フードテックが解決できる問題
フードテックが生み出す最大のメリットは、食に関するさまざまな問題が解決できる可能性があるという点です。
どのような取り組みが行われているのか見ていきましょう。
1.食料不足の問題
世界的に見ると、現代の人口は増加する一方であり、食料不足を解消する方法としてフードテックが期待されています。
例えば、AIが搭載された機械で無人農場を経営する技術が開発されれば、効率的に農産物を生産でき、食料問題解決の糸口として期待されているのです。
2.飢餓問題の解決
フードテックでは、食材を長期保存する方法も開発・研究されています。
世界には、食糧不足による飢餓に苦しむ人がいる一方で、先進国においては常に多くの食糧が廃棄されています。
食材の長期保存は、世界規模で見た食糧バランスを均等にできる可能性があります。
3.多様な食習慣に関する問題
世界には、菜食主義により動物性の食品を避けた食事をする人も多く存在します。
宗教的な問題や、動物愛護の観点、もしくは健康に配慮して菜食主義志向になるなど、理由は様々です。
そんな菜食主義者にとって、植物性たんぱく質の代替えミートが注目されています。
4.食の安全
食品が傷んでいるかどうかを診断するフードテックツールもあります。この技術により、食中毒を防止することが可能です。
また、安全に長期保存ができる梱包材料も開発が進んでおり、傷みを軽減するほか、異物混入の可能性を減らし、より高い食の安全性が期待できます。
5.人材不足の解決
国内では農業や漁業などの第一次産業のほか、食品製造業なども常に人材不足で深刻な事態にさらされています。
また、労働人口の減少に伴い、外食産業の人材不足もささやかれています。
しかし、ロボットやAIが開発されることで、省人化や無人化ができれば人材不足の解決につながります。
フードテックのデメリットや問題点
食に関する問題解決が期待される一方で、フードテックはお金がかかることが課題です。
例えば、太陽光に代わる光を作るための電気代や、雨水に代わる水道代がかかります。
また、必要な栄養が入った栄養液代のほか、肉を科学的に作り出すための科学用品代など、食品開発にも多くの費用がさかれてしまうのです。
フードテックで注目される最先端テクノロジー
フードテックによる、まったく新しいテクノロジーの数多くが注目を集めています。
災害時に役立つものや、多様化する消費者のニーズに応えるものなど様々です。
最先端のテクノロジーをいくつか紹介します。
1.人工肉
菜食主義者の代用食品として注目を集める最新テクノロジーの一つが、限りなく本物の食用肉に近付けた人工肉です。
水や小麦、自然由来の油などを用いた植物由来の肉によって、健康に害を及ぼさずに栄養を摂取できるとして注目されています。
特にアメリカなどの国外の市場では、大豆ミートやグルテンミートなどの製品は、すでに一般的な食材として認知されつつあります。
2.植物工場
農業は、異常気象や害虫など、外的要因に強く影響をうける産業です。これは国内外問わず、世界的な問題として常に取り上げられてきました。
この課題を解決するために生まれたのが、植物工場です。屋内での栽培が可能になったことで、生産量が天候や害虫に左右されず、
砂漠など栽培に向かない気候の地域でも農業を営むことができます。
3.細胞培養
細胞培養とは、動植物の食べられる部分の細胞だけを抽出し、それを培養させる技術です。
本物と変わらない牛肉や魚、野菜などの食材を作り出すことができます。
膨大なコストがかかることが課題ですが、地球環境にもやさしく、衛生管理もしやすいことから、非常に期待されているテクノロジーの一つです。
4.新食材
これまで人類が食してこなかった食料を生産するような取り組みもあります。
ミドリムシを粉末にしてクッキーやドリンクにした製品、必要な栄養がすべて採れるグミなど、新食材と呼ばれるものです。
なかでも昆虫は、栄養価が高く、環境への負担も低いため、商品開発やレシピの研究が進められています。
5.陸上養殖
陸上養殖とは、陸地のプラントで魚を育てる技術です。
陸上で魚を養殖すれば、作業負荷が軽減し、飼育環境をキメ細かく管理できるため生産性も向上し、養殖可能な魚の種類も増やせます。
さらに、消費地近隣での養殖も夢ではなく、新鮮な魚を迅速に届ける高付加価値な漁業も実現します。
ITをはじめとする先端科学技術の活用
フードテックにITやロボティクスを活用して、新たな価値を生み出す動きも活発化しています。
例えば、収集した天候・土や水の温度・土壌成分・作物の生育状況といった農地の情報をIoTで検知する技術や、
経験豊富な農家の知見を学習させたAIで最適な農作業の条件を見つけ出すなど、自動的に管理できるようになりました。
これにより人手不足でも、作物の品質と収穫量を向上できます。
また、飲食業では安全で汎用性の高いロボットを導入し、料理の盛り付けや配膳、皿洗いなどの単純作業を自動化して、人手不足に対応する例もあります。
フードテックを取り入れた事例
実際にフードテックに取り組み、自動化が進んでいない分野を自動化し、環境にやさしい食品の開発をしている事例もあります。
株式会社ニップンは、植物性タンパク質素材「SOYL PRO(ソイルプロ)」を開発しました。
これより、従来では表現できなかった肉のような弾力やクセのない風味を実現して、代替肉として広く利用されています。
大豆ミートなど、代替肉は低カロリー、低コレステロール、高タンパクであることから、健康意識の高いかたを中心に注目を集めています。
また、環境負荷が小さく、地球にやさしいことも注目を集めている理由の一つです。
出典:ニップンSOYL PROブランドサイト
フードテック業界は常にめざましい成長を遂げており、各界における業界から注目されています。
さらなる活用が期待されるフードテック業界に関する最新情報を収集し技術を生かすことで、新たなビジネスが創造できるかもしれません。